周縁飛行

日に日に半径が増大する極大の遠回り。その記録。

202008 石垣島旅行記 ―出発前―

えー、旅行記なのに出発前から書くんですかwと言う人がいるだろうか?

いるなら、言えばいい。好きなだけ。

俺は書く。

―著者

 

1 出発前

2020年7月某日、石垣島へ旅行することが決まった。

異常に長い梅雨の雨がざあざあ降りしきる中、7月の連休前に5年勤めていた会社を退職し、依然として再就職の口が見つからない私の心にもずくずくに雨が降っていた。

というのは全然嘘で、辞めたくて仕方がなかった会社をようやく辞めることができ、せっかくだから今まで我慢してきたことをたくさんやるつもりで再就職などしばらくする気はなく、コロナ禍なので海外に行けないから取りあえず、という感じであるけれどもくんくんのテンションで石垣島行きを決めた。

「結句、ニートが最強ですよね。だってほら、こうしてしたいことがしたい時に、自由にできるわけですから。世間が嫉妬のあまりニートネガキャンをするのも致し方ないことだよね。アハハ」

同行する友人のSに、そんなことを言うと、

「いや、俺は早く再就職したい」と一蹴された。

彼も訳あって、現在無職の身である。

(Sというのは、単純に彼の名前のイニシャルを引っ張ってきているのだが、これだけプライバシーというものが容易く突破される社会においては、それだけでも突破の糸口になりそうな気がしなくもないので、呼び方を変える。私の敬愛する作家、安部公房の著作に「壁―S・カルマ氏の犯罪」という作品があるので、そこから取り、カルマ氏と呼ぶことにする。)

カルマ氏の冷静な反応から、誤解してはいけない。彼もノリノリで同行を決めたのである。

「いやー、でも離島で適当にバイトしながら何か月か滞在とかできたらいいよなー」

「夢だね、人類の夢だね」

「ハードル低いな、人類の夢」

そんな中身のないことを話しつつ、そろそろ予約をしようかと思った矢先に、沖縄が緊急事態宣言を発令したから笑う。

いや、笑えない。

「どうしよう。この旅行によって人間的に成長し、そのことによって、より良い会社への就職を目指していた我々の計画が」

「まったくだ。とりあえず、知事の出方を窺おう」

石垣島への遊……人間的成長の旅は決行なるのか。このままずくずくのニート生活が続いていくのか。

to be continued……

 

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